徒然なるままにその日暮らし

なんか書いてます

「妖異金瓶梅」山田風太郎

エロティックでグロテスク、それでいてミステリー要素はしっかりとある。犯罪の陰に女あり。動機は色と欲。中国の「金瓶梅」に原案をとり、探偵役の応伯爵が謎解きに奔走する。「東西ミステリーベスト100」(文藝春秋、2012年)の「東=国内」編第30位。

豪商、西門慶と彼の愛妾たちの周囲で次々と起こる事件を、西門慶に取り入っている応伯爵が解決していく。

バラバラ殺人、転落死、舌を噛み切る、目をつぶす……事件の被害者は西門慶がこれと目をかけた女たちであり、裏で糸を引いているのは愛妾の一人である藩金蓮。彼女の動機ははっきりしている。ひとり、西門慶の愛を得るがため。

凄まじい感情だ。邪魔なもの、自分より美しいもの、優れたものは排除してしまえという考えは極端だ。西門慶が新たに愛妾にしようとした女の肉を西門慶の口に運ばせるなど、鬼の所業としか思えない。

しかし、美しい鬼なのである。探偵役の応伯爵は藩金蓮の犯罪を暴きつつも、彼女の魔力に囚われている。

本作には多くの美女が登場する。どの美女も筆者の描写力によって非常に生き生きとして魅力的だ。同じ描写力は暴力的な行為ですらも美しく妖しく表現する。読んでいるだけで眩暈がした。